龍神のとりこ
3.龍神、コハク
石像男が少女の前に膝を折った。
目を閉じている。


「・・・」
口元に手をやり、涙で濡れたままの頬で
固まる少女。

石像男の眉根がぐっと寄せられると
一瞬、ふわっと風が舞いあがった。

「・・・はぁ。」
すっと目が開き、薄いグリーンの瞳が少女を捕らえた。
「残念だが、違うようだな。巫女じゃない。」

ため息とも取れる大きな息をつき、がくりと肩を落とした。
首を垂れる。

少女は無言で固まっていると、男が聞いた。

「名前は?」
「・・・」

「とりあえず、帰る方法が見つかるまで一緒にいてやる。
お前のおかげで石化が解かれたのかもしれないからな。」

もごもご、と少女は両手で覆った口を動かした。
「それではわからない。」
男がその両手をひょいと外した。

「・・トーコ。」

< 8 / 139 >

この作品をシェア

pagetop