あなたのヒロインではないけれど



私が働く雑貨屋“ミラージュ”は、近郊に何店舗かを持つチェーン店だけど、店長の裁量権が大きいお陰で各店で独自性を出せている。


私の勤めるお店は駅前通りあり、かつ小中学校が近いからか主なお客様は学生や若者。中でも女の子やOLがメインだから、可愛らしいディスプレイや商品が多い。


近隣のハンドメイド作家さんの預託販売もしているし、ヨーロピアンなお洒落雑貨やシンプルな品物もあるけれど。小さな女の子が好きそうなかわいい雑貨やアクセサリーも扱ってる。


……そう、私が子どもの頃憧れたような。


開店して20年近く経つこのお店は、私の大好きな空間そのもの。子どもの時からやって来ては入り浸ってて。当時から店員だった今の店長と顔見知りになったくらい。


絵本の中のファンタジーが好きだった私は、ここにあったお人形やぬいぐるみやおもちゃや雑貨がお気に入りで。お小遣いを握りしめては遊びに来たんだ。


やがて、買うだけでは飽きたらずに私は自分でも小さな作品を作るようになった。


小学生時代の小さなぬいぐるみから始まって、刺繍やシルバーアクセサリーにラインストーン。ビーズアクセサリーに編み物。ハンドメイド作品に夢中になり、高校時代はアルバイト代が全部材料費に吹っ飛んだくらい。


けど、結局才能はないと悟ったのが高校の3年生で。専門学校への進学をあきらめて、短大へ進んだけど。結局大好きなことを仕事にしたくて、店長に猛烈なアタックし採用して貰えたのが今の職場であるこのお店だった。

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