蝉鳴く季節に…
「千秋ちゃん、今日は早いのね?」



おばさんは、四十代には見えないくらいに若くて綺麗。

上品な人って言うのかな?

女性らしくて、同性として憧れるくらい。



おばさんを初めて見た時、やっぱり杉山くんのお母さんだって思った。



似てるんだ。

笑顔なんか特に。







「はい、今日は終業式だったので早いんです」




そう、とうなづき、おばさんは笑う。



でもなぜか、その笑顔がいつものおばさんらしくないって感じた。

影……がある感じ。



一瞬、不安が頭をかすめた。




気のせい、かな。






嫌な予感を頭の隅に押しやり、杉山くんへと歩み寄る。




ここ三日くらい、杉山くんは寝たきりなんだ。

高熱が続いて下がらないんだって。


呼吸が苦しくなる時もあるから、枕元には酸素マスクも置いてある。




私は、使っているのを見た事は無いけれど……。







「杉山くん、熱は大丈夫なの?」

「うん、少しぼぅっとはするけど」




弱々しく笑う杉山くん…。

そんな杉山くんを見ると、時々切なくなる。



無理して笑わなくてもいいのに……。
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