蝉鳴く季節に…
怖く、なってた。




どうしてなんだろう。


ただ指先が冷たいってだけなのに、私はどうしてこんなに不安で、怖くなっているんだろう。





よくわからない……わからないから………怖い。








冷たい杉山くんの手を、私は握りしめていた。



不安で、不安で…。




両手で包んで、握りしめて、温かくなれって祈ってた。






「水谷、どうしたの?」

「…ううん」

「何かあった?」

「ううん」






声は温かいのに、言葉には体温を感じるのに……。








「…しばらく、こうしていてもいい?」





杉山くんの手を握りしめながら聞いた。






「水谷がそうしたいならいいよ」






杉山くんは笑った。



笑いながら、私の手をそっと優しく、握り返してくれた。





冷たい…手……。






杉山くんは、天井に視線を移し、ゆっくりと深呼吸をしている。




それからまた私に視線を戻して、少し……淋しそうに笑った。







「水谷の手、温かいな」

「……温かい?」

「うん、どうして温かいんだろうな」





.
< 105 / 131 >

この作品をシェア

pagetop