蝉鳴く季節に…
それに、優しい。



『千秋は千秋のままでいいよ。俺はそのままが大好きだから』





そう言って、頭を撫でて笑いかけてくれる。



安心、するんだ。





新木くんは、早くにお母さんを亡くしてる。


だからかな?
人の淋しさには敏感みたい。



そして、私のお母さんに懐いている。



まぁ、お母さんも新木くんを、かわいいって気に入っているんだけど……。









「新木くん、いつまでもこうしていると、お昼時間無くなるよ?」


抱きしめられた腕の中、私は新木くんを見上げる。



「う〜ん…離れるのは惜しいけど、腹は空いてるから困るな」




おどけて笑い、新木くんは私から身体を離す。




「あれ?」



突然、新木くんは足元に視線を落とした。



「千秋、この本好きなの?」







言いながら新木くんが持ち上げたのは、十二番目の天使。







「俺も読んだよ、これ。そして泣いた」


懐かしそうに、新木くんは本のページをめくり始めた。



「そうなの?」



何か以外。


新木くんって、漫画しか見ないタイプだと思ってた。





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