蝉鳴く季節に…
ホームルームが終わった放課後、帰宅しようとしていた私は、教室を出た所で濱田先生に呼び止められた。





「水谷、昨日はありがとな。助かったよ」




昨日……。
あ、杉山くんへの届け物の事か。








「いえ…大した事してませんし」

「杉山から電話きてな、よろしく伝えてくれってさ」

「私に…ですか?」

「ああ、かわいい女の子をよこしてくれて、ありがとうと言われたよ」







……かわいい?



私が?
絶対にお世辞だよ。

気を遣わなくていいのに。









なぜか昨日は、あれから一時間近く杉山くんと話していた私。




大した話はしてない様に思う。
実際、あまり覚えてない。





覚えているのは、蝉の話。

印象に残っているのは…杉山くんの笑顔と、やけに白い肌。




あと……時々曇る表情。









でも会話中杉山くんは、90%は笑っていたんじゃないのかな。

私、面白い話はしていなかったと思うんだけど、なぜか彼は笑ってた。




不思議な人だよ。








うん……不思議だった。


よく考えると、本当に不思議だったんだ。



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