蝉鳴く季節に…
………私、何やってるんだろ。



こんな所で、何してるんだろ。







見つからない様に、ドアに隠れて………一体何をしてるんだろう。










杉山くんに、何を期待してたんだろ……。








私、何を舞い上がってたんだろ。











………………帰ろう。



帰らなきゃ。







私は今、ここにいちゃいけないんだよ。


ここは、私が来くべき場所じゃないんだよ。











病室に背を向けた。










「………ふ」



歩き出した途端、思わず笑いが漏れた。












笑い………。









私、笑ってるんだよね?


舞い上がってた自分がおかしくて、笑えるんだよね?


何をしてたんだろうって、笑えるんだよね?








笑ってるはずなのに。


笑ってるのに。







なのにどうして……涙まで溢れてくるんだろう。













見た事ないよ…私は見た事ない。




あんな杉山くんの顔。


あんな風に、優しく触れて貰った事も無い。











当たり前だ。




だって私は別に、杉山くんの彼女じゃないもん。

ただ話がしたくてお見舞いに行ってただけの、クラスメイトだもん。





恋愛感情なんて最初から無いもん。








だから悲しい訳無い。

悲しむ理由なんて無い。

泣く意味なんて無いのに………。









「……な…んでぇ…?」







涙が出てくるの?






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