蝉鳴く季節に…
12
杉山くんとはしばらく会わない。

病院にも行かない。





そう決めた。

自分で決めた。





なのに、どうしてなんだろうね?

会わないと決めると、苦しいくらいに会いに行きたくなる。



人間の感情っておかしいね。

抑えると大きく膨らむ様にできてるのかな。








杉山くんとの事は、恭子にも話した。


恭子も、ただ話を聞いてくれた。

「千秋がかわいくなったのは、杉山の力もあったんだね」



そう言って笑った。


そして…千秋が後悔しないなら、悲しくならないなら思う様に進みなよって言ってくれた。











杉山くんと会わない日が三日、四日と重なる度に、私はため息が多くなっていた。


自分からパワーが抜けていく様な気がしてた。



大丈夫?なんて梨絵達に心配されて、大丈夫だよって笑い返して。



虚勢張っていたんだ。









杉山くんの声が聞きたくなっていた。

あの優しい声……力強い言葉……。

笑顔も、ビー玉みたいに綺麗な瞳も。


ジュースのプルタブを開けてくれた仕草も。






会えないと、霞んでいってしまいそうで。
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