蝉鳴く季節に…
「よくやった、水谷!俺でもそのメニューはキツイよ」



笑いながら杉山くんは手を伸ばし、汗で濡れた私の頭を撫でてくれた。



大きな白い手で、包み込む様に……。





顔を上げた。

杉山くんと目が合う。





杉山くんは一瞬笑いを止めて、それからまた静かに笑って………。


私の瞳を見つめ返しながら、少しだけ淋しそうに、でも安心した様に微笑んで、こう言ったんだ。






「もう…来てくれないのかと思った…不安になった」








……………え?









「良かった…来てくれて嬉しいよ」








その言葉が嬉しくて…もう、走って苦しかった事もどうでも良くなって、ただ杉山くんの手の温かさにホッとして、力が抜けていく感覚に……私はまた泣いてしまったんだ。







「何でまた泣くんだよ〜」

「違うの…」

「だから何が」

「いいの、何でもないの」




訳わかんねぇと笑う杉山くん。






うん…いいの。


言葉じゃうまく伝える自信が無いから。



だから今は泣かせてよ。


手の温もりを、感じさせてくれればいいから。



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