ブラックバカラをあなたへ
善は急げと言う。




私たちは昼休みが終わろうという時間、彼らがいるであろう屋上へと来ていた。




「たのもー!」




「うわっ!なんだっ……って、燈ちゃんか〜。もう驚かすなよ〜」




デジャブ…




結我は笑っているが、碧斗と咲万は私たちをすごく睨んでいる。




「みんなさっきぶりだね」




「どうしたの〜?」




薙と滾がこっちへ駆け寄る。




「ちょっと聞いて欲しいことがあってさ」




春実の答えに、双子の頭にハテナが浮かぶ。




頭を傾げてる姿が可愛いくて、抱きしめたいなんて事は決して思っていない。




「突然来てしまい、驚かれたことでしょうが、提案があって参りました。聞いて下さいますか?」




優奈が真っ直ぐに碧斗を見つめる。




語尾にハテナを付けてはいるが、顔は拒否権はないと微笑んでいる。




この顔には逆らえないことを私は知っている。




「提案とはなんでしょう」




あの自己紹介以来、一度も喋っていないのではないかと言うぐらい口を聞かない咲満が問いかける。




今日は珍しいことが続くもんだ。




「先程、葉音さんと神代さんが勝負するということをお聞きししたのですが、葉音さんが負けた場合、私たちの正体を教える、そう決めたそうですね」




碧斗が、ああと頷く。




「それを聞き、葉音さんだけに任せるのは良くないとみなさんで協議いたしまた。そこで、合計点で競い合うというのはどうでしょう」




「なるほど。俺らと、お前らの合計点で勝敗を分けるということか」




「その通りです。ちょうどお互いに、A組が三人、B組、C組が一人ずつと、実力はほぼ互角でしょう。この提案、引き受けて下さいますか?」




この勝負、私と碧斗だけのものだったら、間違いなく私が勝っている。




けれど、みんなでとなると、優奈も言った通り実力はそんなに変わらない。




つまり、リスクが大きくなる。




けれど、みんなそんなことは百も承知。




これは私だけではない、私たちの勝負だと思っているのだ。




「ふっ、いいだろう。俺はお前たちの正体が分かればそれでいい」




「それでは交渉成立ということで。私たちはこれで失礼致します」




優奈はそう言うと、一度お辞儀をして屋上を後にする。




こういう時の優奈はほんとかっこいい。




気品があり、何事にも物怖じしない姿勢。




この姿に何度惚れ惚れしたことか。




碧斗の余裕で、かつ、嘲笑するような笑みにでさえ、反応しない。




私だったらイラついて何か口走ってそう。




なんて、心の中で自嘲気味に笑ってみる。




屋上を出ると、「俺、勉強なんてしたくない〜」なんて、滾の呑気な声が聞こえてきた。
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