真白物語
プロローグ
 さわさわと風が吹き、木葉がゆらゆらと揺れている。日もさんさんと照り、心地よい日だ。
 うさぎのまくろは、パン屋である。カウンターには、クロワッサンやメロンパン、食パンなどが並べてあり、とても香ばしい香りがする。店は家と繋がっており、大木に住んでいるのでかなり目立つ。
 すると、向こうから客がやってきた。
「まくろさ~ん、こんにちは~」
「あら、くろまあさん。お腹の子は元気ですか?」
 客は、くろまあと言うらしい。黒くて、お腹が少し大きい。中に、赤ん坊がいるからだ。
「ええ、元気ですとも!よくお腹の中で暴れるのよ。あ、今お腹を蹴飛ばしたわ!」
 くろまあはそう言って、お腹をさすった。それから、
「いつものやつ、くださいな」
と注文をした。くろまあは常連の客らしい。
「かしこまりました」
まくろは、少し微笑んで、レーズンパンとフィッシュサンドを取り出す。それを見ながら、くろまあは
「ここのパンはとてもおいしいわ。お腹の子も、いつも欲しがって暴れているの」
「褒めていただいて光栄です。はい、こちらがご注文の品です」
「ありがとう。あら、またお客さんですわね」
 くろまあが指差した方から、客が歩いて来ている。今日もまくろのパン屋は大繁盛だ。
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