現実、幻想、愛を貫くのは誰か…
…!?
「ゆ、夢か…(しかしなんでこんな昔の記憶を…)」
 クチナシは白と黒でコーディネートされたシンプルだがオシャレな部屋で目が覚める。
「どうしたん?」
 ベッドの横にはハイルがいた。
「いや、なんでもない過去の事だ」
 こちらに来てから4年間…ずっと同じ夢に取り憑かれている。
「会いたいよね。会ってくればいいのに」
「滅びてるからここに逃げてきたんだよ」
 ハイルは申し訳なさそうに頭を下げる。
「まぁ、あれは誰も悪くない…誰も」
 少し沈黙のあと電話がかかってきた。
「はい…
 ハイ…わかりました」
 それはボスからの仕事で内容はまだ話されていないし現場についたら幹部が伝えるとだけ書いてある。
「仕事だ。準備するから部屋から出ろ」
 部屋からハイルを引っ張りだし着替え朝食やら仕度をして部屋を出る。
「いくぞ」
「おいーす」
 ハイルとは同じ班のため仕事中は離れられない。
 車に乗り言われた場所まで運んでもらう。仮にも未成年だから運転はできないだよな…
「ここか、随分古い建物だな…」
 しかもなんか懐かしい匂いがする。これなら寝ないで風景でも見ていればよかったのかもしれない。そんなこと考えながら建物の奥へ進んでいく。たまに後ろを確認しちゃんとハイルが追ってこれているか確認をする。あいつは一定の時間毎に決まって「早いよ」など言ってくる。
「やっと来れたのか」
 建物の屋上へたどり着くとそこはとても懐かしい雰囲気と香りがするが、決してオレの知っている町並みではなかった。建物はほぼ崩壊しており残っているものも半壊の状態で人の影なんてない。
「そう、ここは君の故郷だ。ここに呼んだ理由、話してもいいかな?」
 頭が真っ白になって何も聞こえなかった。そんな脳内に一条の雷が走った。ハイルのビンタだ。
「あぁ。すみません。どうぞ」
「あれは丁度四年前、私がまだ幹部を務めてた時だ。Sクラスの任務として派遣された街は何者かにより滅ぼされていた、そこに唯一の生き残り、君がいたわけだ。ロマンのある話だろう」
 オレは四年前死んだと確信してあの惨劇の場に居たのだがどうやら生き延びてしまって今に至る。その時に現れたものをこの組織は追っているようでその戦闘能力は最高の軍隊に300師団に及ぶようでそれに個人で対抗できるモノを生産したり改良したりしていざという事態に備えている。見えざる敵と戦っている組織だ。
「ここに化物が出てから目撃はなしのようだ、生存者もお前以外居ないしな」
 この組織に入る者で外界から来た者はその世界では死人として扱われているためこの街での生存者は0となっている。正確には全てを行方不明者とかぞられているようだ。
「…お前ら、あれを見ろ、囲まれているな。破壊神崇拝派だ」
 破壊神崇拝派の人間はここに現れたとされる化物を神として崇め再生の前の破壊の為にやってきたと言っているイカれた組織で我らの組織と敵対している。これは多分今回も戦闘だろう…あまり好きじゃないがこれは仕事なんだから。
「向かってきてるね」
 ハイルはゾクゾクさせながら向かってきてる事を報告、彼女は犬並みの嗅覚がある、こいつ自体犬みたいなもん(獣人的な意味で)だからな。
「そろそろ始まりますね」
 ここに数名の面を被った集団が現われる。ハイルはそれを歓喜と思ってかニコニコしてると思ってる間にもナイフは宙に舞っている。その瞬間を見逃さないのは俺とボスくらいだろう。多分、相変わらず相当な薄着で今日も来てるな…
 そんなこと考えながらハイルのナイフを避けると1人そのナイフを的確に撃ち落とす者がいた。多分その相手もナイフを使っているのか床には三種類のナイフが落ちている。相手は二種類使っているようだ。
「その2人は僕が殺るよ」
 相手は既に戦力を5人に減らしている。
「ボスは見ていてください」
 では、俺はあそこの3人を。
 1人素早く攻撃を仕掛けてきた。次に重い一撃の繰り出す巨漢の奴。3人目は動かない。リーダー格だろうか。
「お前らじゃ話にならん」
 2人はさほど強くないな。素早い奴の攻撃を受け流しそれを奪う。そのまま素早い奴の首を切り落とし、巨漢は目から脳へ突き刺す。我ながらエグいことをした。
 3人目に近付こうとしたとき、体が重くなった。これは、もしや。
「…付与」
 呪術師か…しかしこの声。この呪術はたしか。
「フェア」
 やはり戻った。異常な状態は世界が嫌う。それを0に戻せる魔法は呪術にも聞いたか。こっちの組織には呪術師が居なくて試せなかったから嬉しい。
 解いて立ち上がると地面を蹴り上げる。地面が水を蹴りあげた時、飛沫をあげたように向かってくる。これは目眩しをさせるためだろう。目を閉じわざと当たる。背後から微かな足音、そこを斬る。しかしそれは受け止められてしまう。なぜあんなに弱い2人のリーダーがこんなにも強いのだろうか。さっきまで慎重に駒を動かしていたような動きは消え猛攻に出始めた。力量を見定めたらしい。あんな超短時間でよくもできるな。魔剣を使ってみるか。

 これは爆破術を武器に纏わせるかなりの技量を要する魔法。未だに爆破を纏わせる量の安全な数値は分からないが向かってくるアイツに試してみるか。
 しかし流石に警戒をしてなかなかの良ってこない。ならばこちらからだ。
 相手は攻撃を受ける。ここだ。
「Yield!」
 建物は大きな爆発をする。どうやら纏わせる量を大いに間違えてしまったようだ。胴から足は守れたが手首から指先は偉いことになっている。
「なに!この煙」
 別の階ではハイルが驚いていた。目の前で倒れている相手の面を外して見た。しかし半分も開けない間に煙幕を使われ逃げられた。その半分では相手が獣人であることしか分からなかった。
「あの仮面の女、獣人でしたよ」
「獣人か、どうして性別まで」
「まぁ、それは…」
 飛び交った時に手が胸を鷲づかんだなんて言いづらい。それにそこそこ大きかったな。
「クチナシ、ダメだよ、変なとこ触っちゃ」
「それはないから安心しろ」
 嘘だ。
「ここにこれ以上いるのも危ない、要は済んだ。戻るぞ」
「要とはなんですか?」
「いづれ分かる」
 俺らにも説明無しとはかなり重要な期末事項なのだろう。仕事は仕事、深追いはしてはいけない。我々は仕事に従順なだけでいいんだ。
 仕事をまともにこなせない奴はクズ扱いされる御時世だ。だが俺はそれより仲間を売ったり捨てたり見放すやつの方がクズに見える。この組織は特に仲間同士の絆を大切にしているからこんな思考になったのかも知れない。
「さぁ、クチナシ!帰ったらナニしようか」
「若者は盛んだな」
「何もしてないです!」
 こいつの恋人にだけはなりたくない。それに俺には心に決めた人がいる。
「これからするんだもんね」
「まな板に興味はない」
「え、ひどー」
 こいつは幼すぎる。そんなところも人気の理由なのだが、どうやら組織の中ではとびきりこいつはモテる。声や容姿が幼いながらもどこか艶かしいオーラを纏っているからなのだろうか…残念ながら俺は興味が無いから分からない。ロリコンの人達なら分かるだろう…。
「早く車に乗れ」
 ボスが俺らを押し込むように車に乗せ車を走らせた。後ろを見ると増援がバイクを走らせてきている。
「ボクがやるよ、クチナシ、みててね見ててね」
 彼女が集中していると車の周りが魔力で覆われる。高速で移動している乗り物の周りの覆うのはかなりの技量を必要とする。そこからナイフを作り出しバイクに飛ばしたりバイクから飛んでくるナイフを弾く、不覚にもその姿が魅力的に感じてしまった。俺の魔力質の問題上魔力の金属化はできない。仮に出来てもそれを打ち出すのはそうとうの素質がないと出来ない。俺の魔力はとにかく魔力に底が無いことくらいである。特徴が無いため魔力消費が激しいが高火力な魔法器が適している。形質変化も自滅覚悟の近距離爆破魔法程度までである。魔力器というのは古代人が作りあげた破壊神と戦うために生命を犠牲して使用していた武器とされており命を奪うほど魔力を食べるが俺はそれらを普通の道具の様に扱える。いま発見されているのは研究所にある盾のみ、これはSSクラスの任務の時のみ俺に貸し出される。
「クチナシ!そこに魔力器がある、使ってみろ」
 でかいアタッシュケースからレイピアを取り出す。
「それに魔力を込めろ。後はなんとなくやってみろ」
 なんとなくって言われてもな…とにかくこいつに魔力を送り込む、するとこれ先端に雷が集まる。やばいと思い窓を開け相手に向ける。すると一気に高密度の雷が直線に向かっていく。
「わぉ」
 爆発はしないが命中部位から広範囲に火傷と貫通が見られ、威力は恐ろしいものであるということが分かった。こんな攻撃を放っても武器は元気だ、こいつは普通に武器としても使えそうだ。そしてこいつが食う魔力は1発魔術師が二年で消費する魔力とほぼ等号で実に非効率、だが俺にはぴったりだ…なんてものを古代人は作りやがる。
「こんなものいつの間に…」
「研究所の奴らが試作で作ったものでお前用に今日の報酬として渡そうとしたものだ、好きなだけ使え。ハイル、お前にはそこにある袋だ。いつもクチナシが着ているコートとお揃いだ。金はいつも通り」
「僕、がんばるヨ!」
 安い女だ。とにかくこいつを手に入れたのは大きいな、試しがカーバトルというのもロマンを感じる…

ーその後は俺とハイルが無駄に熱くなっただけでとても見苦しいものだった。ボスにもその後苦笑いされ…帰ってくるといつものようにハイルは鬱陶しく風呂までのぞきこんできた。今日ももう限界だ…(主に1人のせいで)もう寝る。ー
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