Blood honey



「――――つまりな、情報が漏れるのを恐れて、マリアの意見は少ししか受け入れて貰えなかったんだ。」


あの後、ギルリアさんから詳しく状況を聞いた。

マリアさんの意見全ては聞き入れて貰えず、"記憶を消す"と言う条件付きで組織を抜ける事が決まったそうだ。

そして私がそれを知ったのは既にマリアさんの記憶が消された後だった。




「そ……ん、な…」


信じられなかった、
もう会っても私の事がわからないだなんて、

小さな頃から母の様に慕っていた、マリアさんが抜けたのは、私にとって多大なダメージを与えた様だった。



「あのっ…!
会うのはダメなんですか!?
まだ、…いまいち信じられ無いんです!
マリアさんに…


マリアさんに会わせて下さい!!」



「……シルビア…」



そして私の願いは叶った。残酷な事実と共に。




「こんにちは、ディラロさん。」



「あぁ、こんちは。
マリアさん今日も綺麗だねぇ。」



「フフフ、イヤだ。
そんなお世辞言っても何も出ませんよ。」



山奥の小さな小さな農村に彼女はいた。
聞いた所、マリアさんの故郷らしい。

マリアさんは笑っていた。



「それにしても、大変だねぇ。
せっかく帰ってきたってーのに、子供を身籠って記憶が無いとは…。」



「………そうでもないですよ、

記憶は無いけど…何処か幸せを感じるんです。

大好きだった人が傍にいる様な…そんな気がして。


だからきっと、この子は


その人との子だと思うんです。
だから幸せですよ、私。」


そうだ、これがマリアさんなんだ


儚げな雰囲気を出しているのに、絶対に幸せを信じている


何処かで心配していたんだ
彼女が

マリアさんが嘆いているんじゃないかと




「………安心しました。」


「…え、」



一緒にいたギルリアさんは疑問を浮かべていた。




「……心配、していたんです。
記憶を無くして
嘆いていたら、と。


でも…大丈夫そうです。
やっぱり、マリアさんには


幸せになって欲しいですから…。」



笑いながらそう言えば、スッとギルリアさんの手が伸びてきて、私の額にぺちんとかました。




「Σい゙っ!?(デコピン!?)」


「なーーに、大人ぶってんだ!」


どうやら私が大人ぶってたのがイヤだった様子。



「別に大人ぶってなんていませんて。
つか地味に痛かったんですけど。」



「うっさい、ムカつく。」

その態度にイラッとし、やり返していいですかと聞くとダメと言われた。




「……帰るか…」


「…そうですね。」



さよなら

マリアさん
どうかお幸せに

その子が産まれる
その時まで―――――――



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