ほら、そうやってすぐ死ぬ。
「……金子。」
「……何だよ?」
「子供の頃の記憶って覚えてる?」
「……少しなら。」
三拍間を置いて金子は答えた。
「お前はあんの?」
「私も少しならある。完全じゃないけど、少しならある。でも、残りの確かにそこにあった時間はどこに行ったんだろうね。」
「忘れてるだけだと思う。物心ついてるかついてないかだし。」
「普通はそうなのよね。きっと忘れてるだけ。でもね、私ははっきりと覚えてたのよ。ずっとずっと、忘れずに。ううん、忘れられない出来事だった。トラウマだった。」
金子は私の回した手の上に自分の手を重ねて言った。
「そのトラウマに鍵をかけて封印してた。つまり、あんまりいい記憶じゃない。それをたった今、思い出したんだ。違うか?」
私は頷いた。
「どんな記憶なんだ?」