無垢なメイドはクールな彼に溺愛される
『あんな男に……惨め……』
あの日彼女の身に何があったのかはわからない。
だが、自分が紳士となって彼女を助けたことで、
青木家という殻の中で身を守っていた彼女が、
そこから外へ出る勇気を身につけたのだ。
ここは応援してあげるのが筋だろう……。
“信用できる男なんてこの世にいませんよ”などとは言うべきでもなかったのだ。
彼女に勇気を与えたのは、他ならぬ自分なのだから……
その日、珍しく残業をせずに会社を出た鈴木は途中駅構内のトイレに入り、
メガネを外し、髪に指先を入れると手櫛で毛先を遊ばせた。
もともと視力はいい。
普段かけている眼鏡は元来人見知りである自分を
眼鏡の奥に隠すためにかけているだけである。