籠姫奇譚

空を見れば陽が沈んできている。

空は緋色に変わり、大通りの桜を染め上げていた。

帰らなければ……。


「瑪瑙さん、あの、どうもありがとうございました。私、そろそろ帰ります」


そう告げると、彼は一瞬寂しげな目をした。


「そう。じゃあ送って行くよ」


「あ、いえ。大丈夫です。お邪魔しました。今日は……嬉しかったです」


きっと遙に知られたら瑪瑙にも迷惑がかかる。



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