チェロ弾きの上司。

「これでひと段落。次の週末からはお前と過ごせる」

……ええと、それは……。
真木さんが、以前、付き合ったらしたいって言ってたことをする、ってことだよね……?

うわぁ、想像して恥ずかしくなってしまった! 無理っ!

あたしは慌てて立ち上がった。
「ごはんっ、ごはん作りますっ!」



本日の献立は、豚しゃぶサラダにひじきの煮物、ほうれん草のお味噌汁。デザートにグレープフルーツ。
だってあっさりしたものが食べたかったのよ。

食後、真木さんにはコーヒーを淹れる。真木さんがコーヒーを飲みながらタブレットを眺めてる間に、ささっと後片付けをする。

あたしが片付けを終え、自分のハーブティーを淹れていると、視線を感じた。
真木さんがテーブルに頬杖をつき、こちらを見てる。
相変わらず綺麗なお顔と瞳に、ドキドキする……。

「……どうしたんですか? 何か……?」

「お前って健全だなーって」

「はっ?」

褒められてないよね。
色気がないっていうか、そんなニュアンスだよね。
そりゃそうよ。その……処女だもん。

「まあ、こっちきてお茶でも飲めよ」

はい。では。
ローテーブルのはす向かいに座る。
ふうふうしてお茶を飲む。
< 175 / 230 >

この作品をシェア

pagetop