いつか孵る場所
救急車のサイレン音が聞こえ、いつも通り、患者を…。

「えっ…」

カルテを見て呼吸困難を起こしそうになった。

− 淡路 ハル −

名前の欄にそう書かれていた。

しかも運ばれてきたハルは声掛けしても反応がない。

救急車の中ではまだあったとの事だが…。

「淡路さん、わかりますか?」

熱が40度を超えているので意識は朦朧とはしているのは当然として。

刺激を与えてみる。

− 痛いけど…ごめん、ハル! −

一瞬、ピクッとした。

でもまた深い闇に落ちようとする。

「起きろ、ハル!」

そう叫んでもう一度してみる。

「…う〜っ」

ハルは荒い呼吸をしながらうっすらと目を開けた。

「…はぁはぁ」

肩で呼吸しながらハルは一瞬目を閉じて

「透…?」

自分の名前を呼ぶ声を久しぶりに聞いた。

透は頷いた。
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