いつか孵る場所
６．決戦前
「おはようございます」

ハルは朝、無事に出社した。

「淡路さん、もう大丈夫なの？」

管理職の女性、神立が嬉しそうに声を掛ける。

「はい、ご迷惑をおかけしました」

ハルは神立に頭を下げると席に座る。
何気に座っているようで心は浮わついていた。
ついさっきまで透と一緒にいた。
思い出しただけで赤面しそうな…

「おはよう、まだ顔が赤いけど大丈夫？」

スッと隣に立っていたのは大竹。
気配を感じなかったので思わず声を上げそうになった。

「おっ…おはようございます」

大竹がハルの額に手を当てようとするので慌ててハルは避ける。

− 私に指一本触れないで〜！ −

心の中で叫んだ。

「大竹課長、大丈夫です。ありがとうございます」

感情も何もない、ほぼ棒読みの台詞を吐いた。

「おおっ…と。久しぶりの出社で緊張しているの？」

大竹の言葉にカチンときたハルは何も答えず、PCを立ち上げて、机にあった書類に目を通した。

遠目に見ていた神立が思わず眉を寄せる。

微妙な空気感が生まれていた。
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