さくらの花が舞う頃に




「………結衣」
  



なるべく気持ちを抑えて呼びかけたつもりだったけど、どうしても声が怒りで震えてしまった。



声をかけられた結衣が、肩をビクッと震わせる。



「……………悪い、今日は帰るわ」



結衣は何も言わなかった。



何も言わずにうつむく結衣をその場に残して、俺はショッピングモールの出口へと歩き出した。



俺が夏休み前に、さくらのおでこにキスしたことをバラされるかもしれない。




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