雪国ラプソディー

理解されない乙女心

翌朝ーー。


「はあ……」


私は何度も何度も鏡を見てはため息の繰り返しだ。


たくさん水を飲んだ。
マッサージもした。ホテルの最上階にある大浴場にも行った。冷水で何回も顔を洗った。コンビニで買った、少しお高い引き締めパックも使ってみた。


「ちょっとはマシに……なってないよね……」


思わず独り言だって漏れる。

朝ご飯を食べ終えた私は今、チェックアウトを済ませてホテルのロビーにいる。

ポーチから取り出した小さな鏡に映っているのは、むくんだ私の顔だ。どう考えても昨日のワインのせい。いや、正確に言うとワイン自体が悪いわけではない。たくさん飲んだ私が悪いんだ。

昨日は小林さんが送ってくれることになってあんなに舞い上がっていたのに、今朝は地獄に落ちたかのような絶望感だ。


(別に、むくんでいるからといって何が変わるわけでもないんだけど……)


好きな人の目に少しでもかわいく映りたいと思ってしまう私の乙女心は、まだ健在のようだ。

そのままぼんやりと座っていると、スマートフォンが震えた。小林さんの名前が画面に表示されて、思わず取り落としそうになる。私は慌てふためきながら、通話ボタンを押した。


「あっ浅見です!」

「……知ってる。ホテルの正面に着いたから」


笑いを堪えた小林さんの声がくすぐったい。すぐに行きます! と短く応えて、私は荷物をつかむと小走りで外へ出た。

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