雪国ラプソディー

意地悪なひと、会いたかったひと



「嘘ばっかり。何が〝癒される〟ですか! そんな口車に乗りませんからねっ」


電話の向こうでは大きな笑い声。どうしてこんな状況になってしまったんだろう。


『まあまあ、朝からそうカリカリしないで。せっかくのかわいい顔が台無しだよ』

「なっ……」


思わず赤くなる顔を手でパタパタ仰ぐ。

電話越しとは言え、さらっと恥ずかしくなるようなことを言われて絶句してしまった。私をからかって一体何が楽しいんだろう。


『赤くなっちゃって、ホントかわいいねえ』

「見えてないのに見えてる風に言わないでくださいっ」

『浅見ちゃんのことはいつも見てるよ』

「村山さんのストーカー!」

『ひどいなあ』


電話の相手は、東部第四営業所の村山さん。
東部第四営業所とは、私が勤めるマナカ商事の地方営業所のひとつだ。

2か月近く前、上司同士が仲が良いという理由だけで、私はその営業所におつかい出張に行くことになってしまった。真冬の雪国はテレビでした見たことがない都会生まれ都会育ちの私。全く想像もできなかったことばかりが起こった雪国出張だった。


ーー例えば、自分の身長近く雪が積もっていたこと。
これは交通マヒするほどの緊急事態だったそうだけれど、私にとっては同じ国とは思えないほどの衝撃的なことだった。


そこで私は村山さんと同じ第四営業所所属の、小林さんに出会った。最初は無愛想だし冷たいしでどうなることかと思ったけれど、最終的には彼に惹かれているというまさかの展開にーー。


『浅見ちゃん。おーい、聞いてる?』

「き、聞いてますよ!」


つい色んなことを思い出して懐かしくなってしまっていた。


そう。私はたった一度しか会ったことのない人に、片思いをしている。

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