雪国ラプソディー

異変に気付いて顔を上げれば、ダークグレーの上着が私の肩にかけられている。胸ポケットに差し込まれた光沢のあるチーフが、今日初めて会ったときのドキドキを思い出させた。


「あの、これは」


驚いて隣を見ると、白いシャツ姿の小林さんがこっちを見ていた。
村山さんあたりが好んで着そうな織り柄のお洒落なシャツだけれど、地の色と柄の色が同系色なため、ほどよくシンプルで小林さんによく似合っている。


「ここ冷房強くて寒いだろ。そんな袖無し着てたら尚更」

「袖無しって……ちゃんとありますよお、袖」


私は、ドレスの上に着ているボレロの袖を小林さんに見えるようにつまんでみせる。


「そんな薄いの、袖って言わないだろ」

「このオシャレが分からないなんて! 女の子に嫌われますよ」

「我慢して寒さに震えてるやつに言われたくない」

「震えてなんかっ」


そこまで言って、ばっちり目が合った。


「……ぷ、ひどい顔」


笑いを堪えたように言われて、思わず顔を上げてしまった自分を呪いたくなった。

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