雪国ラプソディー

薪をくべる人


その時、誰か別の足音が近付いてきた。


「小林、二次会どうする?」


小林さんではない声がする。きっと同じテーブルにいた小林さんの友達だろう。
私はひとりで参加したため、絵里さんが気を遣って披露宴のみの参加だったけれど、きっと小林さんみたいに仲間内で呼ばれている人は二次会があるんだ。

小林さんは、さっと私を背中に隠すように体勢を変えた。


「18時からだったよな。行くよ。車だから飲まないけど」

「了解。……なにお前、ナンパしてんの?」

「なっ、馬鹿なこと言うなよ!」


友達に強い口調で言い返している小林さんは、いつもの仕事中の話し方とは少しだけ違う。涙を拭いながらも、また新しい小林さんの一面を知ることができて嬉しいし、その分どこか遠くて苦しい。


「いやあ、今日イチのネタ仕入れたわ。楽しみだなあ二次会!」


彼はにっこり笑って私の方に小さく会釈すると、エントランスで待っている他の友達の方へ向かって行った。


「おい、ちょっと待てって!」


小林さんの声が響く。私の存在が、お友達を勘違いさせてしまったようだ。申し訳なく思いながら、小林さんの背中に声をかける。

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