リアル
“暑い”っていう言葉は禁句だったのです。

『暑い暑い言ってたら、もうなんもかんもヤになるだろうが!気がめいってくるから……“暑い”は禁止!』


ああ……約束どおり、先輩にジュースおごらなきゃ……。













「――気づいたか……?」


ようやく目の前が明るくなった気がした。

まだ光に慣れない目を、よく凝らしてみると――あたしの前には見慣れた部室の天井が広がっている。

あと、なんだか険しい表情であたしを覗きこんでいるカイ先輩の顔も。


「おまえなあ……ぶっ倒れるまで頑張るなよ」


きょとんとしたあたしに、先輩はようやくその口元をゆるめた。


「あれぇ……そういえば――ひゃあ!」


急に頬に冷たいなにかを押しつけられて、あたしは思わず飛びのいた。

しかし、自分がどういう状況に置かれているのか未だ理解できていなかったあたし。


あたしはどうやら――部室のソファに寝かされていたもよう。


「……っ、ぎゃあああぁぁ」


「――ちょっ、おまっ……!」


先輩の服のすそを引っ張ったまま、あたしは見事にソファからころげ落ちていた。




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