SECRET COCKTAIL


「おじゃまします」


「おー、雅弥、やっと来たか。あいつら、もう来てるぞ」


どうやら、今日はお兄ちゃんの部屋で飲み会らしい。

玄関にはまた、何足も男性物の靴がある。


雅君が玄関を上がるのを視界の片隅に捉えながら、のろのろと靴を脱ぐ。

俯いた瞬間、意図せずぽろりと零れ落ちた涙が、玄関の上に丸い染みを作った。


「雅弥、レモンジュースあったか?」


「買って来たけど、何作る気だよ」


「カカオリキュールあるから、カカオフィズ?」


「だったら、炭酸いるだろ」


「それは、あいつらが買って来た」


階段の下でそんなやり取りをしている二人の傍を黙って通り過ぎた。

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