強引な彼の求愛宣言!
「ずっと、思ってたんです。素敵な声だなって」

「……そう? 自分じゃ、よくわからないけど」



自分ののど元を片手でおさえ、武藤さんは首をかしげる。


そっか。わからないのか。

こんなに、素敵なのに。



「武藤さんの、声って。すごく不思議な感じです。なんか……思わず、なんでも言うこと聞いちゃいそうに、なる」

「………」

「とっても……素敵な声、です」



話しながらも、まぶたが重くて。

だんだん、言葉が途切れ途切れになってしまう。


不意に武藤さんが、私の方に顔を寄せてきた。

今まで以上に距離が近付いて、彼がまとうマリンノートの香りが濃くなる。



「……深田さんは。俺の声、好き?」



時折窓の外のネオンが照らす、端整な顔。

薄暗い車内に溶けてしまいそうな落ち着いた声は、それでもはっきりと私の鼓膜を震わせる。

その問いかけの意味も答える自分の迂闊さも深く考えられないまま、小さく首を縦に動かした。



「……はい。……好き、です……」



とうとう耐えきれなくなって、ゆっくりまぶたをおろす。

タクシーのわずかな揺れも、武藤さんの甘い声も、全部が心地いい。


強烈な眠気に抗えずずぶずぶと意識が混濁していく中、ふと思った。

……私……武藤さんに、自分の家の住所言ったっけ?



「……へぇ。いいこと聞いた」



なんだか最近似たようなセリフをどこかで聞いたなあなんて、思う間もなく。

私の記憶は、プツリとそこで途切れた。
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