強引な彼の求愛宣言!
見つめる私の視線に気付いたのか、武藤さんはまた内緒話をするように私の耳元へとくちびるを寄せる。



「別にかっこつけるために、今日ここへは来たわけじゃなくて」

「、」

「……今夜仕事の後、何か予定はある?」



他の職員たちには聞こえないような、吐息混じりのひそめた声。

私は無言のまま、首を横に振った。



「そっか。……じゃあ、こないだきみを送って行ったコンビニに、8時で」

「え」



思わず、目をまたたかせる。

武藤さんはもう何事もなかったかのように上半身を起こし、好青年風のやわらかい笑顔を浮かべていて。



「それでは深田さん、よろしくお願いします。……三木さんも、今日はありがとうございました」

「いえ、こちらこそ」



いつの間にかすぐそばにいた三木くんが、申し訳程度の微笑みでうなずく。

私はというと、熱くなった顔を隠すこともできないまま、ぼうっと武藤さんのことを見つめてしまっている。



「失礼いたします」



綺麗にお辞儀をして、武藤さんは窓口を離れた。

「深田さん挨拶」、と後輩に小声でつぶやかれ、我に返る。



「……っあ、ありがとうございました!」



三木くんとともに頭を下げ、その後ろ姿を見送った。

自分のデスクに戻ってからも、耳元から灯って侵食した熱はなかなか冷めやらなくて。


そっと、武藤さんの低くて甘い声が流し込まれた左耳に触れる。

もう、誤魔化しようがないほど──……私は彼に、堕ちていた。
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