強引な彼の求愛宣言!
「いや、白石さん。そろそろ慣れようよ」

「無理ですよー! かっこいいんですもん!!」



断っておきますが、ここまで全部小声です。三木くんは私たちのこの会話に気付かずに、自分のデスクで稟議書とにらめっこしてます。



「むしろどうして深田さんは、あんな普通に三木さんとお話できるんですか??!!」

「えー……同い年だし。一緒に仕事してると見慣れるし。というかタイプじゃないし」



私がつるっとぶっちゃけると、白石さんは信じられないという表情で大袈裟にのけぞった。



「なんという贅沢を……! これは支店長に報告せねば!」

「うん、しなくていいからね?」



冷静に彼女の肩に片手を乗せ、軽く首をかしげる。

たしかに三木くんはまごうことなきイケメンだと思うのだけれど、どこか冷めているというか、人と一線を引いているところがあるというか。

さっきのやり取りもそうだけど、彼、あんまり人にやさしくないからね。まあ、恋人に対してはどうかわからないけど。

でも本人情報では、今のところ三木くんに彼女はいないそう。本部にいる私の同期とか紹介しちゃおうかなー。


その後はアナログに手書きで勤怠表をつけて上司に提出し、白石さんとともに営業室を後にした。

彼女のマシンガントークを聞き流しつつ、更衣室で私服に着替える。



「あたしはですね、ちょっとそっけないくらいの人がいいんですよー。尻尾振ってどこまでも追いかけまわしたくなりますね!!」

「……へぇ」



私は、やさしい人がいいけどなあ。

頭の中でそう考えながら、思い浮かぶのは武藤さんのやわらかい笑顔で。

うーん、これはまずいよなあなんてぼんやり危機感を覚えつつ、ロッカーの扉を閉めた。
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