秘密の契約
エレベーターの中へ入ると日菜の目からポロポロと涙があふれ出た。


「日菜……」


愛と梨絵はなんと言ってよいか分からなかった。


3人は十和子が日菜の中でどんな存在を知らなかった。


だからただ千波に冷たくされたと思っているだけだ。


「忙しくて機嫌が悪かったんだよ」


郁斗が慰める。


かぶりを大きく振る日菜。


そして日菜はとうとう両手で顔を隠してしまった。


「日菜?そんなにショックを受ける事じゃないよ」


愛が日菜の肩に置いて慰める。


「そうだよ あとできっと来てくれるから」


日菜はすぐにでもこの場からいなくなりたかった。


帰りたい……。


だがエレベーターは最上階へ到着した。


先に来ていた荷物を運んだベルボーイが部屋の前に立っていた。


愛と梨絵にかかえられるようにして日菜は部屋の中へ入った。




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