恋の後味はとびきり甘く
10. 予感
 お正月、涼介くんはおじいさんの家に行ったそうで、学校が始まる前日に私の部屋に訪ねてきてくれた。クリスマスの翌日に会ったときと同じように、ソファの上でティーカップを持ったまま一点を見つめている。

「おじいさんはお元気でした?」

 私が隣に座って話しかけると、彼がゆっくりと私を見た。その目はなにか言いたげに揺れている。

「どうしたの? なにかあったの?」

 おじいさんが体調でも崩したのかと心配になって訊いたが、涼介くんは小さく首を振った。

「いえ、祖父は元気です」
「それならよかった」

 涼介くんが黙ったまま紅茶を数口飲んだ。やっぱりなんだか様子が変だ。

「ねえ、涼介くん、なにか困ったことでもあるの?」

 涼介くんが私の顔を見て、意を決したように唇を引き結んだ。そうしてティーカップをソーサーに戻してローテーブルの上に置いた。

「実は……ベルギーのショコラティエに、ブリュッセルに来ないか、と誘われたんです」
「えっ」
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