恋の後味はとびきり甘く
「母のことは仕事に集中して考えないようにしてたのに……。やだ、もう。私ってば年上なのに、こんなに泣いてみっともない……」
「みっともなくなんかないです」

 背中に回された彼の腕にギュッと力がこもる。

「鈴音さんを見たら、すごくがんばってるのがわかります。だから、たまには泣いたっていいんですよ」
「たまにじゃないです……。私、涼介くんの前ではいつも泣いて……」

 初めて会ったときもそうだ。今日だって会ってまだ二度目なのに。

 でも、彼の雰囲気がそうさせるのだろうか。彼の前では、どうしても気持ちが緩んでしまう。緊張するのに安心するなんて、変な感じ。 
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