2月14日

 聞き慣れない声がした。


 私以外に人がいたことを、その時に知った。


 びっくりして振り返ると、そこには男の人が立っていた。


 見たところ高校生くらい。


 きっと同い年か、ひとつ年上くらい。


 服装は暖かそうなコートに覆われていて詳しくは見えなかったけど、ゆるっとしたパンツにラクダ色の冬用のブーツを履いていた。


 黒い短めの髪の毛に、目じりの下がった優しげな瞳。


 声も低すぎず高すぎず、聞き取りやすい声。


 雰囲気の柔らかい男の人。


 じっと見てたらその人は困ったように笑って、「捨てるの?」と、またつぶやいた。


< 10 / 13 >

この作品をシェア

pagetop