さよならから始まる
さよならから始まる
乗客の少ない電車、ガタンガタンと揺られる車体と移り変わる風景。


ふと目をそらせば、真っ直ぐ窓の外を眺めるあなたの姿。


…意味がないと、分かっているんだけど。


つい、目で追いかけてしまうの。


だめだな。


私はまだ、あの時から進めないまま、立ちすくんだまま。


『さよなら』


あなたのその一言を、私はまだ、忘れられないまま、あなたに囚われたまま。


いつまでも過去に夢を見て。

いつまでもあなたを願って。


もう終わったのに。


もう「さよなら」と言われてしまったのに。


あなたに。


それなのにあなたを見るたびに、ぎゅっと胸は締め付けられて。


視線に気づいて。

視線に気づかないで。


私を見て。

私を見ないで。


なんて、矛盾した想いが混じり合うこの感情は


あなたに向かうこの感情は


好き、なのか

執着、なのか


もう、分かんないや。



< 1 / 15 >

この作品をシェア

pagetop