王子の初恋は私な訳ない
放課後、昼休みに運んだ問題集をまた職員室に持っていった。
澪ちゃんとももりんは今日デートって言うから、独り身の寂しい私は行く先々で話し込んだ。教室に戻つてくるのに1時間以上かかった。

「やっべ、日誌書いてない。」
少し早足で教室に帰ると、やはり誰も居な・・・1人居た。
私の席の隣で机に頭を付けてる王子が居た。

あれ、教室に男女2人きり!?
なんてちょっと興奮気味の私。
いやでも寝てるのに起こしたら不味いからゆっくり近づいて、極力音を出さないように日誌を書いた。

ふと王子をみたら目が合った。
顔を伏せながらこっちを見ていた。
ビックリしすぎてシャーペンを落とした。

「ご、ごめん!起こしたよね!ごめん!邪魔した!」
そう言ってシャーペンを拾い、急いで荷物をまとめる。
良く分からないけど違う所に行かなきゃ行けないと思った。
心臓がバクバクし過ぎて冷静な判断が出来ない。
日誌途中だけどいいや、図書室にでも行こう。
ダメならそこら辺のベンチでもいい。
とりあえず王子の隣に居ちゃ駄目だ、迷惑だ。

カバンを持って席を立ったら、何故か日誌が消えていた。
あれ、さっきまで机の上にあったのに。
下を見てもない。
机の中を覗いてもない。
カバンを探してもない。

困って王子を見てみたら、やっぱりこっちをみていた。

「ごめん。うるさいよね。ごめん。」

凄く情けなくなった。
あーもう、何やってんだろ私。
静かにしなきゃいけないのにテンパってバタバタするし、日誌はこの短時間で無くすし。
日誌はいいや、明日謝ろう。
なんかもうダメだ。
王子には変な子って思われたんだろうな。
迷惑な子って思われたんだろうな。
あー・・・・・・・・・

動く気力がなくなり、そのまま椅子に座った。
王子と同じように机に顔を伏せた。

王子と同じように・・・
あ、王子いるんだった。
今ここに王子居るんだった・・・
王子と私・・・
2人きり!?!?そうじゃん!!!

思考回路が戻った私は
ガバッと起きた。
すると澪ちゃんの席に
椅子に逆に座り
椅子の背もたれに両腕を乗せて
私を覗いてる王子と目があった。

「え!?!?!?なんで!?!?え!?!?」
さっきまで隣にいたのに今は目の前に居る。
訳分からなすぎて思考回路緊急停止。

よくみてみたら王子の右手に日誌がある。
あ、見つけてくれたのか。

「ごめん、日誌探してたの。ありがとう。」
「・・・隠してたんだよ。」
「そっか・・・ありがー・・・っ!?」

隠してた!?
あー、そうか。
そこまで私の事が嫌いなのか。
どんだけ嫌われてるんだ私。

「ごめんね。」
そう言って席を立つ。
目頭が熱くなってきた。
こう見えて涙脆い自分が嫌だ。
もう王子に迷惑かけないようにしよう。
視界に入らないように頑張ろう。

机2つ分ほど歩いた所で、全身が何かに包まれた。

「そんなに俺の事嫌い?」

左肩から王子の声が聞こえた
左を向いたらフワフワの髪の毛があった。
王子が後ろから私を抱き締めているようだ。

状況が掴めない。
私を嫌いなのは王子の方で、でもその王子が私を抱き締めていて・・・
しばらく訳が分からずそのまま黙っていた。
私を抱き締める王子の腕にちょっとずつ力が入っていくのが分かった。

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