夜の散歩

夜の散歩

わたしが初めて彼と出会ったのは、大学1年生の秋。
仲のいい部活OBさん主催の飲み会だった。飲み会の場所となったのが彼の家で、そこで彼とわたしは知り合った。

そのときのわたしには付き合いたての彼氏がいたし、なにより飲み会のメンバーがほとんど面識のない先輩ばかりで、彼のことは正直全く記憶していなかった。

わたしは、先輩の家なのに潰れてしまい、かつ、ベッドまで占領してしまっていた。

次の日の朝、演奏会で弾くために二日酔いのなか仕度をしている彼のことを、わたしはベッドに横たわったまま、ぼーっと眺めていた。
唯一、彼との出会いで覚えていることだ。

もし、わたしがそのOBさんと仲が良くなければ、その日、彼の家へ行かなければ、こんなの苦しい思いをしなくてすんだのかな。