キミに恋の残業を命ずる

赤いポーチ。



いかにも女性者のポーチが、買い物かごの隅に隠れるように落ちていた。

あまり日本では見ないようなお洒落なデザインだ。ひとつひとつ色合いのちがう赤がタイル状に並んでいて、とても素敵でいかにも大人の女性が使っていそうなデザインだった。


そっと手に取って…悪いとは思っても中を見てしまう。

ブランド物のルージュやビューラーと言った必須の化粧道具が入っていた。





…そっか。やっぱりね。





課長ほどの人だもの。やっぱり女の子の一人や二人は来てるよね。



やっぱり、都会の男の人は怖い。



口先で調子のいいことを言って女の子を安心させておいて、裏では好き勝手やっているんだ。


アブナイ、危うく騙されるところだった。


このポーチを落とした人も、自分だけはと思って騙されているんだろうか。
教えてあげたいけど、もしかしたら割り切って付き合っている可能性もある。わたしには到底まねできない大人の付き合いってやつをしている人なのかもしれない。
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