キミに恋の残業を命ずる
始業時間五分前というぎりぎりに出社すると、どの部署ももぬけの殻になっていた。

みんな朝礼に行くためにラウンジに集まっていた。





九時十五分ぴったりになって、最初に前に立ったのは社長だった。


「日頃より社のために尽力をつくし感謝している。知っての通り我が社は転換期に立っている…」


最前列の一番右端に課長がいた。わたしたちに背を向ける形で座っている。
その左隣りには服部部長がいた。

服部部長がいることには少し驚いた。
裕彰さんとは親友だから、特別扱いなのかもしれない。


亜依子さんはすでに社長のやや後ろ隣りで社員と向き合うようにして座っていた。
すこし緊張した面持ちで、社長からの合図をうかがっているようだ。


「…よって、より若い力に社の未来を託すにあたり、ぜひみなに報告したい件がある。これはキミたちにとってはとてもおどろく事実であり、大変な混乱をきたす可能性が生じるかもしれない。が、あくまで社や皆のことを思っての発表であるということをご賢察いただきたい。また、これはわたしの家庭の事情でもあることを先に断っておきたい」


いよいよ、その時が来た…。
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