日常の体温、特別の鼓動
つまむ、という動作が難しい彼女の手に、マカロンを載せる。
彼女はゆっくりと、手のひらを顔に近付ける。
薄く小さな手のひらの上で、マカロンがかすかに震えている。
彼女がうつむくと、髪が頬や口元に流れて邪魔をした。
ぼくは彼女の顔に掛かる髪を両手ですくった。
癖のあるぼくの髪とは全然違う感触。
指先が、彼女の頬や耳に触れてしまう。
「ちょ、っと、あのっ……!」
「ん?」
「な、ナチュラルにそんなことしないでくださいっ」
斜め後ろから見下ろす彼女の耳が真っ赤だ。