私のエース
 叔父さんは何かにつけて必ず気を遣う。


例えばロゴマークだ。
クラフト封筒に同系色の文字では小さくて目立たないようにしてある。


それは叔父さんの気配りだった。
お客様のプライベートな事柄を調査する探偵業。
それを全面に打ち出さないように配慮したのだ。


もし、調査されていることがバレたら死活問題になるかも知れないからだった。


社内恋愛を禁止している場合もある。
御近所トラブルに発展することだって考えられる。


探偵と言うのは、それらを常に念頭に置いて行動しなければならないのだ。


決して叔父さんが凄腕の探偵だと自慢している訳ではないけれど、俺にとっては雲の上の人だった。




 俺は今、叔父さんと同じなのかも知れない。
叔父さんが奥さんを殺されたように、俺は恋人を失った。
真相は解らないけど、さっきのメールから考えるとそうにしか思えない。


俺は試行錯誤しながら、学校へと繋がる道を懸命に走っていた。




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