私のエース
 『ううん、別に……ただ磐城君がグランドに来なければ、とかね』

町田百合子は確かにそう言った。
でもそれは橋本君の独り言だった。


町田百合子は橋本君のストーカーに違いない。
何時も何時も後を付けてだからそれを聞いたのだ。


「聞かれたかも知れないって、橋本君は気にしていたたのかもね」


『ああ、そうかもな。だから俺に言ったのかな』




 「橋本君ごめんね。みずほの葬儀の会場で二人が一緒だったでしょう。だから……」


『だから、どんな関係か聞きたくなった?』


「うん」


『俺達は同じFC選抜にいたんだ。だから懐かしくなっただけだよ』


「あれっ、そうだった?」


『あのな、お前さん小さい頃から一緒だったよね。少年サッカー団から俺と磐城だけが選ばれたことも知らなかったのか? そんなんで良くエースと付き合っていられるな』

木暮君は呆れたと言うような口振りだった。


「だって、あれはみずほの影響だもん」


『そう言えば、橋本とエースをを抜かせば全員保育園から一緒の口だったな』


「そう、その口よ。だから急に磐城君と仲良くなったみずほが信じられなくて一緒にいたの」


『えっ、俺はてっきり親友だと思っていたよ』


「やだ。みずほは今でも親友よ。だって私に飛びきりの恋をプレゼントしてくれたもの。いくら感謝したって足りないくらいよ」


『お、のろけるな。俺の目から見てもお前さんの彼氏は凄い逸材だ。離すなよ』
木暮君はそう言いながら笑っていた。


私はその後で、彼との仲良し振りをアピールした。


私は、遣るべきことはこれで全て終わったと思っていた。




 『有美ちゃんその話誰にも言っちゃだめよ』
さっき私が罪を告白した後で私にそう耳打ちしてくれた継母。


もし労災が認められたら私の犯した罪は消えるのだろうか?
でも、磐城君はその事実を知っている。


何時か木暮君に会いに行って、私が父親殺しの犯人ではないことに気付いてほしいと思っていた。


でもそんなことより、私がエース恋人だから命が狙われることが気掛かりだった。



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