アオゾラをカナデヨ
それからのことはあまりハッキリと覚えていない。

興奮したままロビーに出て集まると、小沢先生が一言「ありがとう……」と言って声を詰まらせた。

先生にとっても、この数年間は努力が実らず悔しい思いをしてきた。

嬉しい涙は、暖かい。

男女構わず、みんなと抱き合い笑い合い、泣き合った。

ずっとずっと、ピンと張りっぱなしだったみんなの緊張の糸が、ハサミを入れたように切れているのが分かる。

そんな涙でぐしゃぐしゃの私のところへ安斉くんがやってくる。

「よく頑張ったな、ソウ」

優しい大きな手で、頭を撫でてくれる。

「うんっ」

また涙が溢れてくる。

「あはは、泣け泣け!」
「もー!」

そんな私の耳元で安斉くんは「明日の放課後、楽器室でまってる」そう囁く。

ーードキッ!

笑顔の安斉くんを泣き顔のまま見上げる。

「うん」
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