イジワルなカレの愛情表現
それよりも考えなくてはいけないのは、今から会社に行ってからのことだ。

永瀬さんが目黒さんに宛てたメモに、なんて書いたか分からずじまいだけど、間違いなくなにか言われるのは目に見えている。

そしてなにより居酒屋に向かうまで、永瀬さんに腕を掴まれた状態で歩いているところを、残っていた社員に見られていたということだ。


朝一で社内中に噂が広まることはさすがにないだろうけど、一日が終わる頃にはどうなっているか予想できない。


不安要素を考えれば考えるほど、胃が痛くなるばかり。


「有休取ればよかったかも」


改札口を抜けたところで、ポツリと声が漏れてしまう。


本当は朝一で職場に向かおうと決めていた。

けれどやっと眠れたのが朝方で、一時間だけ寝て起きようと目覚ましをセットしておいたのに、起きることができなかったのだ。

結局いつもと同じ時間に出勤することになってしまった。


でもな、どうせ今日一日だけ休んで逃げたとしても、いずれは現実と対峙しなければならないのだから、同じことなんだよね。

トボトボと重い足取りで会社へと向かっていく。


永瀬さんは守ってくれるなんてカッコイイこと言っていたけど、守ってくれるはずないでしょ? 第一どう守ってくれるっていうのよ。


噂は時間が経てば消えるかもしれないけど、問題は目黒さんと西垣さんだ。

ますます嫌がらせが悪化しちゃいそう。

会社までの道中、何度も深い溜息を漏らしてばかりだった。
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