愛と勇気の英雄伝承
「ふあぁぁ~あ」

ぐぃっと伸びをして、昨夜の事を思い出す。

(昨日は…えぇっと、お店に入ったらおじさんが飲み物くれた先が…あれ??)

「おはようさん。よく眠りましたね?酔っ払い王女さん。」

少し意地悪く言う彼にコツンとデコピンされる。

「痛た…。」

涙目でうずくまってしまう私にルシフがあわてて冷やす物を探しに行ってしまう。

「フフっ。あたたた……、え?血??おでこから。」

驚いておでこにそっと触れてみると、明らかにデコピンされるだけでは有り得ない量の出血だった。

「そう言えば、この前カに刺されて腕をかいた時も肌がもろくなっていたよう な……??」

まさか……!!

急いで街の病院で診察してもらうと

やはり魔力熱だった。

「私、そんなに魔力使ったっけ??」

今までの経路を思い出しても、戦闘をしたとかそう言うのも無いのだ。

おかしいなぁ?とラズリが首をかしげていると。

「仕方ない。この地は、呪いをかけられてるんじゃ。」

不意に医者が話し始めた。

「呪い??一体誰に?!」

驚くルシフを差し置いて、ラズリが医者に話しかける。

「ま、まさか……。金色の髪じゃありませんでした?ちょうど私と同じような……。私の双子の妹なんですけど、目が水色で。」

震えるこぶしをギュッと握りしめながら、おそるおそる聞いてみる。
実は、この街に来た瞬間から、妹リベアの“気”を感じ取っていたのだ。

しかし、医者はそっと首を横に振り答えた。

「金色なんて、綺麗な色じゃ無かったよ……。目は真っ赤で、髪も服も体も、全てが真っ黒だった。アレは悪魔だ!!この世のモノじゃないっ!」

ブルブルと身を震わす医者をなだめながら、だんだんこの人がこの街が
可哀想に思えてきた。

「すまないねぇ……。思い出すとどうも震えが止まらなくて。」

「いいえ、教えてくれてありがとうございます。それと、思い出したくもない事を、すみません……。」

「良いんだよ、君には関係ない事だ。気にしないでおくれ。」

青白い顔で言う医者が気の毒でつい口走ってしまう。
これがこの少女、ラズリの悪い癖なのだ。

「いいえ!気にしないなんて出来ません!!私が倒してあげましょう!その悪魔!」

「え?!おぃっ!また勝手に……!!」

ドンと胸を張るラズリを、あわてて止めようとしたルシフだったが
とっくに遅かったのは、本人も気づいていた。
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