この手を離さない
カラオケルームに入ると、真っ先に理沙が口を開いた。



「光輝から昨日電話もらったの。全部聞いたよ」



理沙の言葉に顔を上げた。



「理沙に?未央じゃなくて?」



これも光輝の気遣いなんだと思うと、涙がこぼれそうになる。



「実は私ね、昨日の電話で光輝のこと叱りつけちゃった。奈美がせっかく勇気出したのにって思ったら腹が立っちゃって。でも光輝ね、本当に奈美の気持ち少しも気づいてなかったみたいだよ。私に電話かけて来たのも、驚いたからかけて来たってのいうのが大きいみたいだし」



光輝を叱る理沙――なんだか想像がつく。



この人は、きれいな顔して怒らせると怖いんだから。


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