俺様上司は溺愛体質!?
 無茶もいいところだがちとせは必死だった。
 なんせ十年のトラウマが目の前にいるのだ。必死にもなる。

 だが出来る男というのは目ざといものらしい。

 義理堅くも全てのデスクの島を回った真屋時臣は、一般職のデスクでも好感度の高い笑顔を浮かべつつ、そこで挙動不審なちとせを発見した。

「……あ」

 彼の作られた端正な笑顔が一瞬真顔になったのに気付いたのはちとせだけだったし、ちとせの思わず漏れた声も真屋時臣にしか届いていないはずだ。

 彼はほんの数秒ちとせの顔を見つめ、それから彼女のデスクの上に目を走らせると、女なら誰でもとろけるような笑顔を浮かべ
「初めまして。真屋時臣です。よろしくお願いします」
と上品に目を細めた。


 だがそれはちとせにとって最悪の挨拶だった。

(全然「初めまして」って顔じゃないんだけど……! 早速嫌な予感がするんだけど、どうしたらいいのー!)

 目の前が真っ暗になった。




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