甘く苦い、毒牙に蝕まれて
そんなこんなで、長いと思っていた夏休みは瞬く間に過ぎていき、新学期を迎えた。
「あ、まひろっ!おはよ」
「おはよう、万桜」
新学期早々に、下駄箱で万桜と会った。
夏休みに頻繁に会っていた事もあり、休み明けにも関わらず久しぶりに会った気が全然しない。
「なーんか、❝久しぶり❞って感じしないな。夏休みに会い過ぎて」
万桜も同じ事を思っているようだ。
「俺さ、なんだかんだでまひろとばっか遊んでた気がする」
「わっ、私もっ!」
万桜にとって、私は……少しだけ特別だったりするのかな?
何度もそんな考えが脳裏をよぎっては、一喜一憂。
だけどさすがにそれは己惚れすぎだと、すぐに気持ちは沈んでしまう。