武士になりたい!
「もしも、山崎君の記憶が…
また消えてしまったら、今度はどうしますか?」

「それらしいことがあったのか?」

「……少し
昨日から、囈言を……
心配し過ぎですかね?
相部屋になって、初めて過ごすのに
挨拶してすぐ休みました
ずっと苦しそうに何か夢を見ているようで
朝には高熱です
なんだか、不安で…」





翌日の朝には、熱が下がり

お粥も食べれたそうだ


斎藤に付き添わせ、一日養生させた



夜には、どうしても話をしたいと起きた



「主の命令で君ちゃんを含む十名で
長州へ潜入しました
君ちゃんが敵に山崎烝の存在を話して
山崎烝ではないかと疑われた仲間が
殺されました
多分、顔が見たかったんだろうと思います
仲間の命を犠牲にしてまでも

誤算だったのは、私が女で
妊婦だったことでしょう
その上、大阪で目覚めた私は、記憶を失っていた

そこから、嘘を思い込まされました

夫婦として、幸せだと

本当に…

思っていました

ただ、君ちゃんがそれなりに私を大切に思ってくれたことは、真実だと思います

私達、口づけすらしていませんから
罪の意識が少しあったのかな?

あの日、君ちゃんの後ろにもう一人
長州の忍がいました


多分… 君ちゃんは、山崎烝として
本当にソイツに追われていたと思います

自害したと思わせる為に…


思い出したんです

あの臭い火薬のような不思議な奴
死体の中で、死んだ振りして

君ちゃんが自害するのを見届けた

君ちゃんは、うまく騙したつもりかも
しれないけど…

あの場に私を呼び出したことを考えると
多分… バレたと思います」

「じゃあ しばらく外出禁止だな」

「そうだな!そしたら、向こうから来るかもしれねぇな!」

「よし!山崎!
お前は、俺たちが守ってやら!」

「うむ 任せろ」

「ふふっ 僕も守るからね!」

「そんな…巻き込む訳には……」

「山崎君!仲間なんだ!当然の事だろう」

「よかったですね!強い味方がいて!」


皆が口々に山崎を守ると言った


「山崎… お前の元主に会えねえか?」

「十年以上、音沙汰なしの私に
会ってくれるかさえ謎ですけど…
それに…簡単に会える方ではないので」

「誰か、聞いていいか?」

「えと……天子様です」



嘘だろ……







ってことは……




「お前……天子様と恋仲だったのか?」

「まあ そうなりますかね
長州から帰ったら、側室になる予定ではありましたけど、お子がいましたから」

「なんでそんな時に長州に行ったんだ?」

「ちょっと天子様と喧嘩して…
完璧に私が悪いんだけど…
ま!おかげでこうして、皆さんに会えましたから!よかったと思います!」



俺が… 主でいいのかよ…


山崎は、いつになく、よく笑った


そして、素直だった



「俺は、横取りしたみてぇなのは嫌なんだ
だから、ちゃんと現主として、認めてもらいてえと思ってよ
相手が天子様だと、難しいな」

「何か方法を考えてみます
私も謝っておきたいので…
あと……総ちゃんと恋仲になったこと
認めて貰いたいです!」


コイツ、俺を悲しませるのうめえな…

上手すぎて、涙もでねぇよ!!


くっそ!総ちゃんとか呼ばれてんのかよ!


総司なんて、何にも免疫ねぇから

いちいち赤くなりやがって!!!



くっそぉーーーーーーー!!!!!



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