武士になりたい!
数日後



山南さんが、脱走した


〝江戸へ行きます〟


どうして…わざわざ行き先を告げて




土方さんは、僕に大津まで行くようにと

指示をした


「やぁ」


山南さんは、土方さんが大津までと言うことを見越して、待っていた

「このまま逃げてくれませんか?」

「総司…僕はね
新選組のお荷物になりたくなかった
立派な参謀がいれば、僕は…
いらないでしょう?」

「そんなこと、誰も思っていませんよ」

「総司……よく聞いて欲しい
僕の考えが正しければ、山崎君の記憶は
感情を乱すことで元に戻せる
最後に僕を必要としてくれた山崎君の
役に立ちたい!連れて帰ってくれ!」



山南さんは、もう決めていた



僕は、何も言えなかった


僕らは、何も語らず屯所へ


「切腹します」


山南さんが自ら申し出た


「介錯を総司に頼みたい」

「お受けします」


山南さんは、にっこり笑って

「ありがとう」  そう言った




切腹の支度が整った




永倉君が明里を連れて来た


「山南はん!!」


恋仲の二人の別れを見ていたら



烝が心配になった


この介錯を受けた僕を


どう思うのかな?



明里を帰して、切腹の儀が行われる刻に


「山崎君をここへ呼んで下さい」


烝が僕らの目の前へ


「これは、僕の望んだことです」


山南さんは、武士らしく見事とも言える
最期だった


山南さんは、やはり頭のいい人だ


「山南副長…」


予想通り、烝の記憶が戻った

久しぶりに烝の声が聞けた


「なんで…」




そして、僕らの相部屋生活は終わった


「もうすぐ春ですから、通常に戻します」


烝が以前のように、笑わず

皆との関わりを辞め

一人で過ごすようになった


山南さんの死を自分のせいだと
思っているようだった



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