偽りの御曹司とマイペースな恋を


突然現れた瓜生父。
いきなり妙なことを言い出すから周囲がざわめいて。

「どういうことだパパって」
「も、もしかしてそういう関係?」
「どっちの意味だよ」
「え。そりゃもちろんパトロンの」
「違います。そう言うんじゃないんです!」

ほらみろ変な意味に取られてる!

「どうしたの歩?いつもの様にこっちへおいでよ」
「い、いつもの様に……?」
「だから違うんです。この人は」

ただの変なおじさんなんです!
と言いたいのを我慢して、でもなんと返事しようか迷う。
だってここでは瓜生とのことは内緒なので上手く立ち回らないと。

「どうしてそんな冷たいことを言うの?うちの一路と結婚するんだから。結果パパだろう?」
「ばっばーーーかーーー!」
「えー馬鹿って酷い。これでも中高大と主席で卒業してますー」

このおじさん全部言いやがった。

ほらみろ皆ポカーンだ!

「な、名栖って…瓜生さんとそういう関係だったのか」
「気付かなかった。な、なんだよ。話してくれりゃ」
「編集長知って…あ、隠れてる」
「知ってたらあんな扱いしてないだろ」

どうしよう。皆さんそわそわしてコッチを見ている。
歩は困った顔をして、でも何も言えなくて。
否定は出来ない、だって付き合っているのは事実。

こんな微妙な空気になるから嫌だったのに。

「父さん!」

そこへ駆け込んでくる瓜生。
かなり焦っているのは絶対この怖いくらい陽気な父親のせい。

「あれ一路君。早かったね」
「やけに仕事が積まれると思ったらやっぱり父さんのしわざか。
こんな所で何をしているんですか?ここは俺に任せてくれと言ったはずでは」
「だって歩が仕事している所が見たかったんだもん」
「……、…歩の、…歩の邪魔をしないでください!」
「え。そんな怒る事?もう、心が狭いな一路君は」
「そういう問題では」
「わかったわかった。じゃあ、私はここの社長君とお茶でもしてくるよ。じゃあね」

振り返って、歩にもバイバイと笑顔で言って出て行く父。


「あ、あの。瓜生さん」
「すみません。あの人は勝手なんです、…何か失礼なことを」
「いえいえ、何も。ただ、その。…先に言ってくださればよかったのに」
「え?」
「名栖と結婚するそうで」
「え」
「あ。もしかして家の支援もその関係で…?」
「あ。い、いえ。あの。……それは、また、別の話ですから。
すみません、これ差し入れです。それじゃ。また、次回の会議で」

瓜生もオロオロしながらも袋を先輩に渡して出て行った。








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